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正確な クラブスペックを 実現する方法 株式会社ヤードスティック 山代谷哲男

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統一基準がないといわれるゴルフ用具。だが計測の基準を知り、それを組み合わせれば正確なスペックは実現できる。計測の基本とその仕組みを知り、正確なクラブを提供できるようにしよう。


ゴルフクラブの統一基準は未だ不備の状態

 ゴルフ用具のスペックに統一性がないという指摘は昔から言われてきました。

 以前はスウィングバランスも日本ではグリップ側から12インチ、米国では14インチと、支点が違っていました。シャフトフレックスも振動数だったり、デフレクションだったり、メーカーによって測り方から違います。その上、同じメーカーでもシニア用モデルのSシャフトとパワーヒッター用モデルのSシャフトでは明らかに固さが違っていることが珍しくありません。

 市販品を買う場合なら、それはあまり問題ではないかもしれません。今は実際に試打して選ぶのが普通になっています。スペックの数字は、違うモデルを互いに比べるには適していませんが、同じモデルの中でなら重め、硬めのモデルを探すのにスペックの表示は使える場面があります。表示されたスペックを手掛かりに試打しながらクラブを探すのも、手間は掛かりますが現実的な方法でしょう。

統一基準の前提となる測定の基本を知ろう

 カスタムクラブを作ったり、シャフト、グリップを交換するとき、クラブの調整をするときには、正確なスペックを測りたい。クラブが現状どんな状態で、それをどのくらい変更するか、できるだけ正確で詳細なデータに基づいて調整したいと考えるのは当然のことです。

 何を基準に、どんな方法で測定するのがいいのか。それは個人が勝手に決められることではありません。業界全体で議論し、皆が納得する方法を見つけるべきことだと思います。もしそのような議論が行われるのであればその議論に私も加わり、私なりの知識を提供して協力するつもりです。けれども今回はそれよりも前の段階。測定器の取り扱い方についてお話したいと思っています。

 私は自動車部品の製造会社で働いた経験があり、そこで世間一般の測定方法や基準というものを見てきました。その私からみると、ゴルフ業界の仕様の決め方、測り方には、残念ながら疑問を感じることがあります。

19-1-スウィングウェート-[更新済み]

高性能スイング・バランサー/三光精衡所

高性能スイング・バランサー/三光精衡所

バランス計、基準はあるが計測器が揃っていない

 一番身近な話をひとつ書いてみましょう。ゴルフ工房に限らず、専門店、量販店など、ゴルフクラブを販売するところなら大抵1台は置いてあるバランス計についてです。業界の人ならご存知でしょうが、このバランス計が意外に不正確です。同じクラブを測っても、バランス計によってD0になったり、D1になったりします。違うメーカーの違う機種で結果が違うのは当然、同じメーカーの同じ機種でも違ったりします。

 そういう現状を、業界は仕方ないことだと受け止めているようです。

「バランス計は計量法に定められた計測器ではないから精度を出せなくても仕方ない。そんなに目くじらを立てることではない」といったように。

 バランス計はハカリなどと違い、直接取引に利害を生じるものではありません。肉100グラムを買って家で測ったら90グラムしかなかった。1メートルの布を買って家で裁縫しようと測ったら90センチしかなかった。こういう場合には明らかに不都合な結果になるので、正確なハカリが必要です。

 それに対してD1と表記されたドライバーが実はD0だったとしても、ゴルファーは1ポイント分、損をするわけではありません。だから不正確なバランス計が見逃されていると考えられています。

 多少不正確でも取引が不公正になる訳ではないのは事実でも、だから「精度を出せなくても仕方ない」とはいえません。正確なバランス計を作れない訳ではないからです。

バイブロスコープ/三光精衡所

バイブロスコープ/三光精衡所

 

ゴルフクラブスケール/ ゴルフシステムワークス

ゴルフクラブスケール/ゴルフシステムワークス

バランスの正確な計測は手近な道具でも計算できる

 長さ、重さ、それに角度は絶対的な基準があり、計測器もそれらの基準をもとに作られます。ところがバランス計は支点からクラブの重心までの長さにクラブの総重量を掛けた値で表されます。長さと重さを掛けた値なのです。

 ヤード・ポンド法のもとで考案されたため、インチ・オンスの単位で表記されますが、(グリップ側から重心までの長さ−14インチ)×総重量を計算し、その答えが240インチ・オンスだったらD0。それから2インチ・オンス増える毎にD1、D2と数字が大きくなっていきます。

 インチ・オンスをグラム・センチに換算すれば、メートル法のもとでのバランス計になります。正確なハカリとメジャーがあれば、スウィングウェートは計算で出せます。その気になれば「正確なバランス計」が作れない訳ではありません。

 あるいは使う前に調整をして240インチ・オンスのクラブを乗せたときにD0になるように調整すればいいのです。その基準となるクラブはどうするのか? と聞かれるかもしれません。私のところではその基準棒を作っています。それを使ってチェックすることもできます。打ち合わせが必要な会社には同じ基準棒を備えてもらい、当店で測ってD0のクラブは、相手の会社で測ってもD0になるようにしています。

 もっと簡易なやり方をするなら、正確に長さと重さを測り、計算してスウィングウェートの値を出したクラブを作ります。値はD0でなくてもいいし、クラブではなく基準の棒でも構いません。新しいバランス計にそれを乗せ、計算した値を示すように調整するのでもいいでしょう。

スウィングウェート-2

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